74個


301心眼「○○(相手の名前 例:すず)の声が聞こえる…それだけで僕は幸せ。

……何度君に…そう伝えたか…。

僕は眼が見えない…だけど…○○の声だけで…それだけで僕には、僕の生きる世界があった。

○○だけは、誰にも奪われたく無かった。○○だけが居てくれれば…それだけで良かった……。

…なんで、眼が見えないんだ…。

この眼さえ見えていれば……○○は………僕のこの眼じゃ…どこに○○が居るのか分からない。

何も分からない…分からないんだ!!

○○を…○○を助けたいんだ…。

誰か…誰かっ……誰か……そこにいるなら…一度だけでいい…僕の代わりに…○○を見てくれ…○○を………。

誰かっ……………。助けて……。」



302「○○様…今までありがとうございました。

貴方についてきて良かった…。

貴方と過ごした日々は、ドキドキする事ばかりで…毎日がアッと言う間で…。

すごく楽しい毎日でした。

戦で傷ついた貴方を癒す時には…泣きそうにもなりましたが、貴方が私を必要としてくださる事を、いつも嬉しく思っていました。

そして今、貴方の妻として死ねる事を…誇りに思います。

さようなら。○○様。

貴方様の命の尽きるその時まで貴方様に幸福のあらん事を。」



303「好き??僕は嫌いだね。

どんな人間に対してもニコニコ出来る君なんて、僕は信用出来ない。

何が"君は特別"だよ…何が"君が好き"だよ!!

どうせ誰にだってそうやって媚(こ)び売って笑ってんだろ。

もう僕に近づいて来るな!!この嘘つきが!!

………なんで?なんでまだ笑ってんの?…大嫌いなんだよ。その笑顔。」



304涙「助けてくれようとして、ありがとな。 

私、誰も頼るヒトいなかったから、とても嬉しかった。

でも、外から来た奴が此処で命落とすの、良くない。

だからもう逃げて欲しい。

……私、お前の事…忘れない。

私の知らない外の世界の事、沢山教えてくれた。

でも、此処…私の古里。守らなきゃいけない。

それ、私の使命。

ありがとう。○○。私の大好きなヒト。」



305「ねぇ?届くと思う?

……ああ…ごめん。いつも不意に言葉にしてしまうんだ。

…いつも、いつも此処で呼んでる。

影も見えないある人の事を…いつも呼んでるんだ。

届いてるといいな。僕の声…。

届くかなぁ?どう思う?」



306「今は辛いかもしれない。

でも救われる日がきっとくる。だから今は信じて戦うんだ。

何があっても…諦めないで。

生きて…生きて…生き抜くんだ。

闇が深くても、絶対に一筋の光が見える。

いつか…僕等また出逢えたら…連れていってあげるよ。僕の住んでいた世界に。」



307「なんで僕に遠慮するかなぁ…。

もっともっと…僕に甘えてよ。

僕は…君の為に傷つくなら…そんな傷に痛みなんて感じない!

そんな事よりも…君が傷つく姿を見る方が…ずっとずっと辛いんだよ…。

此処が…心が痛いんだよ…。

自分のためになんて思わなくて良い。僕の為に…側にいて欲しい。

僕が絶対に守るから…!いつか…君を笑顔にしてみせるから…!

もう何処にも行かないで……。」



308「なんで戻ってきたの?

なんで逃げなかったの?

此処へ来たって…私は助からない。

アイツ等は私を殺そうとしてる。

君には関係無い……。

ねぇ…なんで逃げてくれないの。こんなに言っても分からないの?

……来る…。早く…早く逃げて!!

っあ………。そんな……そんな…そんなそんな…!そんな事って……。

やめて…もうやめて!!

私は大人しく死ぬ…もう死ぬから…。

もう誰も傷つけないで…。」



309「私ってさ…馬鹿だからさ…何1つ…分かって上げられ無かったんだよね。何も分かってない癖に、"何で貴方が傷つかなきゃいけないの。私なんか、死んだって良い"なんて言って…あの人を傷つけて………。

私…あの人に会いたい……もっと…伝えなきゃいけない事…いっぱいいっぱいあったのに…それなのに…何も伝えれて無いっ…。

もう…本当に会えないの…?本当に…この世界のどこにも、もうあの人はいないの??

ねぇ…ねぇ!!!○○!!!返事してよ…。」



310「もっと…簡単に伝えられたらなぁ…。

もっと簡単に…伝える事が出来てたら…もっと違ってたかもしれない。

でもさ。今更間違えを正せる訳でも無し、アイツが帰ってくる訳でも無し…どうにもなんねぇ事だってあんのさ。

そういう時はさぁ、もう先に進むしかねぇの。

いつまでもクヨクヨしてらんねぇし。

だから、お前ももうアイツの話すんなよな?

進まなきゃなんねぇんだ。少しずつでも…一歩一歩さ。」



311「帰ってこないの。でも…だからってあの人の大好きだったこの場所を捨てられなくて…。

何でだろうね?いっそのこと捨てちゃえば…どんなに楽か。

そんな事は解(わか)ってるんだけどなぁ。

でも…どうしても諦めきれなくて…どうしても捨てきれなくて…。

バカだなぁ…私。

帰ってこないって分かってて…いつかっていう希望に甘えちゃうなんて…。

帰って…きてよ…。いつか、いつかで良いからさぁ!!」



312「良いんだよ。

俺は、お前を生かす為についてきた。だから今更、命なんか惜しくねぇ。

なぁ、聞け。人生、別れなんていくらだって訪れる。目を反らす事なんかできねぇんだよ。

……あのな。悲しいのは俺だって同じ。出来ることならまだついていきてぇさ。

だけどよぉ…っ…俺の身体はもう…もたねぇんだ。

分かるだろ!!聞き分けの無い事を言うな。

お前にはお前の先がある!!

俺に甘えるな。自分で歩け!

そうでなきゃお前に未来はねぇ!分かったか!!

………そうだ。それで良い…。

……く…俺も落ちたモンだな…。大切なモン1つ守れねぇとはな。」



313白黒(白)「なんで??……なんでだろう。

僕にも分からない。

でも、理由なんかどうだって良いんだ。僕は君の側にいるべく此処にいる。

それが全てだし、それ以上でもそれ以下でもない。

上手くは言えないけど…それで僕の中では納得がいくからそれでいい。僕にとって、何が大切なのかは僕が決める。

それは他人に決められて良いものではないし、決められないもの。

白黒つけなくたって良い。そう僕は思う。

といっても、君はきっと、白黒つけたいんだろうけど…でも、白と黒の境界線…それって何色なんだろう?

白なのかな?それとも黒?

…そう。答えなんか無い。

この世界の答えは、全部見る人の主観でしかない。

そこに実質なんてものは存在し無いのに…みんな何かを見て答えを語る。

…それが悪いことだとは思わないけど、でもそれじゃあ寂しすぎる様に僕は感じてしまう。

……消え行く人。一体何処へ行くんだろう?

世界と世界の境界線も…そんな答えみたいに曖昧であったなら……。

どんなに、…どんなに幸せだっただろうか。

言葉にならずに涙がでてしまうくらい、僕は貴女を愛している。

………例え、その先に何も無かったとしても……。」



314世界の歯車に。「あ……。来ちゃったんですね。

べつに、来なくて良いですよって…あれだけ言ったのに。

なんでそんなに怒ってるんですか?光栄な話じゃないですか。

私が、この世界の歯車になることで、この世界が救われるなんて。そんな夢みたいな話…これ以上は無いですよ?

ほら、危ないから、離れていてください。もう此処でお別れです。

……そんな目で私を見ないでください。これは私が望んだ事なんですから。

………○○さん。貴方が私に生きて欲しいと願う様に…。私は貴方に生きていて欲しい。

正直に言うと、私だって結構怖いんです。

今こうして歩いてる足だって、プルプル プルプル震えちゃって…。

だけど私は!決めたんです。

貴方が生きるこの世界を、私が守るんだって。

だから貴方は、ちゃんと生きてください。だって、これからも世界は回り続けるんですから。ありがとうございます。○○さん…大好き。」


315「何故…。此処に来た。

私の死を悔やむ義理等、お前には無いだろう。

クッ…アア……。来るな。それ以上この私に近づくな!!

…貴様にだけは我の死に顔等…見せたくは無い…。

長きに渡り…国を燃やしてきた戦(いくさ)も、これで終わる。

お前の言う平和とやらが、この国に蔓延(まんえん)する事となる日も遠くは無いだろう。

これでこの国の戦力すら地の底に落ちようとも、もはや誰1人文句等言うまい。

……いや。私はこれで良いと思っている。

この目で、この国の滅びる様を見るのは死ぬことよりも辛い。

何よりも…誰よりもこの国を愛した…剣士として…この国を守り続けていきたかったが…。

その願いも負けてしまっては叶うまい。

さぁ…もういい。私の話はここまでだ。勝者に語る事はもうやめよう。この世はお前のモノだ。

……………。

ただ…これだけは覚えていろ。暮れた世はもう二度と、明ける事は無い。もう二度とな。」



316夢「酒も金も女ももういい。

十分過ぎる程に好きにやってきたからな。

だが、そんな私も少しばかりは戯れ言を言う様になった。

もう歳もとった。手に入れるべきものは全て手に入れた。

だから今度は、夢を見てみたくなったのだ。

誰にも汚されない。独りぼっちの孤独な夢をな。」



317「……離してください。

全く…貴方のせいで、生きていたくてしょうがない。

貴方が私に生きていて欲しいとか言うから…好きとか言うから…。これからどうなるんだろうとか、幸せになれるかなとか…自分が生きている未来に期待しちゃうんです。

なんでですか?死に損ないの私に、なんで希望なんて見せるんですか??

明日は決して明るくないのに…なんで生きていなきゃいけないんですか??

要らないんですよ。裏切られる事、辛くなること…分かってるのに無駄に時間を貪っていく人生なんて……。」

 

318「これからも世界は変わっていく。でもそこには必ず、生物がいて、未来がある。 

終わりはしないんだ。これからも。

だから、君は僕がいなくなったその後も、この世界にいて欲しい。

この世界が変わっていくことから、目を背けないで欲しい。

君の一生はまだ長い。

君の命の尽きるその時まで、君はただ懸命に生きて欲しい。

自ら死のうなんて、そんな事は夢にも思って欲しくはない。

死ぬことはいつだって出来る。

だけど生きる事は今しかできない。

向こうで僕はいつまでも待っている。だから焦らず…その時になってからゆっくりと来てくれればいい。

愛してる。例えこの世からこの身が消滅してしまったとしても。いつまでも。」



319「……はぁ…やはり、僕にも呪いは宿っていた様だ。

…10年前、僕にとって大切な人が死んだ。……いや、死んだというよりは、咲いた…という方が正しいのかもしれない。

その人は、とても花が好きな人だった。

家の庭は、花々が咲き乱れ…その花1つ1つに毎日自ら水をやり、枯れた花をみつけては涙を流していた。

そんな彼女だったから、花の神にでも好かれたのだろう…ある日彼女の身体から棘(いばら)が生え…美しく気高く…そして妖艶(ようえん)な大輪をその心臓から咲かせ…死んでしまった。

それから僕は、彼女の育てていた花々を育てた。…彼女の匂いが残る花畑に、彼女の面影を求めていた。

その日からだ。僕は呪いを抱え…今まで生きてきた。

花の神とやらは、彼女を想う事すら…許してくれないらしい。

っ………△△、すまない。君を側に置いたのも、もしかしたら…彼女がいなくなった空白を、寂しさを……埋めたかっただけなのかもしれない。

こんな身勝手な僕の側で笑っていてくれて、ありがとう。

これからも、その笑顔で…生きていて欲しい。

そしてどうか、この花畑を…燃やしてくれ。」



320「………何も要らなかった。

……あの人が生きていてさえくれれば、私は何も…要らなかったの。

でも…そんな願いは届く事も無いのよね。

あの人、私に夢見せてやるって…無理して死んじゃった。

私はさ、今…ずっと夢見てるんだ。

あの人が、何にも無かったみたいにヒョコッと現れて…"わりぃ、また失敗したわ"って…残念そうに笑うことを。

ずっと……ずっと願ってる……

あはは、やっぱり…変かな。こういうの。」



321戦場での別れ「大丈夫。貴方はちゃんと貴方を信じて戦ってください。

後ろなんて、振り向かなくたって良いんです。

貴方はただ目の前の敵を見ていれば良いんですッ!

だって、それでもちゃんと…!私達の未来を守ってくれる…。それが、貴方なんですから!

例え、他の誰が貴方を疑ったとしても…!私は私なりに…貴方を信じていますから!!

だから!!だから…!振り向かないで!!

私を信じて!!ちゃんと…!笑顔でまた会えますから!!」



322空が青い理由「"どうして空はこんなにも青いのか"君は何度も僕に聞いたね。

僕はいつも…"何でだろうね"と はぐらかしてた。

………ねぇ?見えているかな。

今日も空は…こんなにも青いよ。

僕には少し、君がいない空の下を独り歩くのは寂しく感じてしまうけど…それでも今日も明日も明後日もずっと空を見上げて歩き続けるよ。

そしていつの日か僕もそっちへ行くときまでには…空が青い理由を、君に教えてあげれるようになるよ。約束だ。」



323双子の死別~兄 アルの最期の言葉~「なぁ…弟よ。

……お前は生まれてから今まで22年間5か月3日と21時間12分5秒を一緒に歩んできた訳だけど…やっぱりさ、こういうのって先に生まれた方が先に逝くのが筋っていうか、順番っていうか。

…まぁ、あれだ。今から約5分以内くらいに俺は死ぬ訳だ。

泣くな。少なくともこの戦いが終わるまでは泣くな。

今まで双子だからって散々比べられてきた。だが、お前はお前だ。俺にはなれない。ならなくて良い。ならない方が良い。

お前はお前として…シャンと生きろ!!」



324双子の死別~弟 ナルの兄との別れ~「アル…アル…!まだ…まだ早いだろ!!今まで22年間5か月3日と21時間12分5秒…こんだけしか生きてねぇんだぞ!

起きろッ!!目を開けろよ!!

アル…筋(すじ)とか順番とか…そんなのどうだって良いんだよ…!

僕はアルに生きていて欲しい。

アル…僕の目をみろ!!アル!!」



325「僕は平気だよ。

君を守れるのなら、どんな痛みだって負ってみせる。

君の事が、何よりも大切なんだ。

正しく無くたっていい。間違っていていい。

ただ大切な君を守りたいから。

だから君は、いつだって笑っていて欲しい。

そう思うのは、いけないことかな…?」



326才能「僕は死にたいんだ!!放っておいてくれよ!!

母さんも父さんも姉ちゃんも!!僕が何で必要なのさ?

僕は遺伝にそぐわない落ちこぼれだ…。僕のせいで、皆がどんなに馬鹿にされ…どんなに嘲笑われてきたことか!!

誰も言わなくても、誰に言われなくても!僕には分かる。

僕は…この家には必要無い。要らない子供なんだよ。

姉ちゃんみたいに、賢くて可愛くて…それでいて格好良くて!!完璧な人間がいるんだから!!

ねぇ…父さん…母さん。分かるでしょ?本当は感じてるんでしょ!?

だったら…綺麗事なんか言わないでよ。そういうのが…逆に僕を苦しめてるんだよ。いっそのことっ…!!"お前なんか要らない"って…捨てられた方がよっぽど幸せだ。」



 327死刑前の言葉「皆っ…!!良いから帰ってよ!!

僕は…これ以上誰にも傷ついて欲しくないんだ…僕が生きていく為に、誰かを犠牲にしていかなきゃいけないなら、それなら僕一人が死ねば良い!!

オッチャンも…ベルおばさんも…ルイもポコも!!皆…僕の為に死んだんだ…僕のせいで死んだんだ!!!

皆…皆ぁ!!皆には、明日も…笑っていて欲しいっ……。

僕は罪人だ!!皆を死なせた罪人だ!!こんな僕の為に…命をはるなんて!!そんな馬鹿げた事は…もう、やめてくれぇぇ…!」



328格好悪い仲間と俺は。「っはは…はははは!!皆ぁ…俺ぁ反吐(ヘド)が出るぜ。何だってお前ら…俺をそこまでして生かしてぇんだ。

俺なんか、ちっぽけで…何の役にも立たねぇ。どうしようもねぇ奴だってのによぉ?

泥だらけになって…血 垂れ流して…号泣して…みっともねぇなぁ。

本当、お前らは皆馬鹿だ。

馬鹿な仲間だ…!

あーあ。クソ…俺まで泣けてきたじゃねぇか。(笑)

1つだけ。俺に言わせてくれ。

これから俺は、皆の力の甲斐(かい)もなく死んじまうかもしれねぇ。

最後の最後で、馬鹿面して"やっぱ無理でした"なんて言って笑ってるかもしんねぇ。

だけど…俺は、お前らみたいな馬鹿で格好わりぃ連中と!!これからも生きていきたい!!!

俺の為に!!その尽きかけてる力!もう一度かしてくれ!」



329「馬鹿だなぁ…。○○の癖に、余計な事考えちゃってさ??

言っとくけど、私は貴方に生涯寄り添うって決めてるんだから。

だから、どこまでだって、どこにだって連れていってよ。

私には、どんなに大変なところよりも、○○がいない世界のほうが、よっぽど見たくないんだから。」



330向日葵と。戦と。仲間と。「時とは実に残酷で、冷たいものだ。

周りの人間は皆、戦で死んでいった仲間達のことを忘れていく。

だが、私は夏がくるとこうして思い出す。向日葵(ヒマワリ)畑が燃えた、あの空襲の日の事をな。

向日葵が焼き焦げていくこの臭いを…仲間が死んだ苦しみを…何年、何十年経(た)とうが、決して忘れない為に…!」



331花贈りまでのタイムリミット「もういいっ!!私には時間が無いんだ…面倒な台詞等聞きたく無い…。

私は、果たさなければならないんだッ…!

この手に持った花を…届けなければならないんだ…。

なのに…なのに私のこの足は…身体はっ……たった…たったこれだけの道を、もう進もうとしないんだッ!!

悔しい…悔しいッ!!こんなに、こんなに悔しいことがあるかッ!!」



332最後の力「ッ…ああ…はぁ…はぁ…。

ごめんね。もう僕は…ダメみたいだ。

悔しいけど、街まで君を送り届ける事はできない。

平気さ。君なら必ず帰れる。

僕が追っ手を此処で引き留めるから。

だから早く逃げて。

っハハ…。僕が不幸者だって?…違うんだよ。

僕は君を生かして死ぬ事に何も悔いていない。

僕は君を愛した。僕は、僕の人生においてたった1つの宝物を守り抜けたんだ。これ以上の幸せ者なんか、他にいないだろ。」



333「私、自分の命なんてどうでも良いんですよ。

私が死んで、他の何かを救えるのなら、喜んでこの命を差出しましょう。

呪いを止めるのに、血が必要だと言うのなら一滴残らず、この私の血液を捧げます。

貴方の計算では、"決して間に合わない"との事でしたが、私が命を惜しむ人間では無いという事は計算外だった様ですね。

ッフフ…ええ。どうぞ。やるならやってください。

私の命をかけて、この国は絶対に守りますから。」



334「ん?ああ…昔、此処には村があったんだ。

小さな小さな村だったけど、私にとっては此処が世界の全てだった。

村に唯一流れる清流アンティーラ…村中の水がそこから汲み取られていた。

小道では犬と追いかけっこ。

近所の人はどの人もとても優しくて通りかかったらリンゴを1つくれるんだ。

……そんな平和なこの村も、たった一夜でこの様さ。

つくるのは何百年かかっても壊れるのは数分もかからない。

不思議だよね。武器だって人間が作ったはずなのにさ。

こんなに簡単に壊れちゃうなんて。」



335「もう、死んじゃうの?

もう、消えちゃうの?

何を言ってるの?寂しくない訳無いじゃん。

オジサンはね、家族なんだよ。

オジサンはね、一緒にいなくちゃいけないの…。

先にいなくなっちゃ、駄目なんだよぉ?

オジサン…ズルいよ。オジサンは、なんで笑えるの??

嫌…笑えないよ…目がグシャグシャだよ…。

オジサン…いなくならないで。

オジサンが、此処に来てくれて良かった。

そう私に思わせたのはぁ…。オジサンなんだよ。

だから、オジサンは…ずっと私の側にいなきゃ…駄目なんだよ…!」



336「放っておけ!!アイツの選んだ戦い方だ。アイツが身をもって果たせば良い。

ああ、無謀だよ。勝てる保証なんか何処にも無い。

いつだってそう。僕らが行くなって止めても、すがっても…アイツはただ自分の思う道を突き進む。そういう奴なんだ。

無謀だろうと絶望だろうとアイツには関係無い。

ただ1人で勝手に血を流して、勝手に助かってまた言うんだ。"ただいま"ってな。

もう止められないんだ。

死ぬまでアイツは止まらない。

何があってもな。

アイツが死んだ時は…ああ、馬鹿が遂に死んだかって…そうやって平気な顔していれば良い。

それが、アイツにとっての幸せだから。」



337ケンカ。たった一度の言葉「何でだろう? 

"君なんか居なくなっちゃえ"って、ボクが言っちゃったのにさ。

明日謝れば良いやって、簡単にボクは考えてた。

恐かった夜を君が変えてくれたのに

君がいて、やっと暗い夜が楽しくなったのに、

またボクは、一人になっちゃったよ。」



338「だって!!必ず護るって言ったじゃないか!!

なにがあっても!僕達一緒だって、言ったじゃないか!!

見捨てられないよ。放っておけないよ。

アイツは今…苦しんでる。

1人ぼっちで僕達を護る為に苦しんでる!!

そんなの、僕達が許していいのか、?

今、行くんだ。助けるんだ。

仲間を、僕達の仲間を!取り返しにいくぞ!!」



339人柱「しょうがないじゃん!!

…しょうがないじゃん…。私は、人柱なんだから。もう、決まった事なんだから。

この運命からは逃れられないんだよ。

私が、たまたま選ばれただけ。

それを、他の子がなれば私は助かったのにとか…逃げたいとか…そんな事は思わない。

私は、皆の為に何か出来るのなら、ちゃんと…その役目を果たす。

だからさ…○○にも、応援して欲しいな…。

本当はさ!怖くてガクガク震えてるし…何で私なんだろうとか、普通に思う。

でも…やらなきゃ…。

村を救わなきゃ。

ね…○○。私の背中…押して欲しい。

私………逝っても良いよね…?」



340「正しいとか、正しく無いとか…そんなのどうだって良い。

私は…救わなければならない。救えなかった事を…ずっと後悔してきた。

もう後悔したくないの。

もう一度…いいえ。これからもずっと…あの笑顔が見ていたいのよ。

例えそれが…!間違えていたとしても。

本当に果たす事が出来るのなら!!

天使にだって悪魔にだって…なってやるわ。」



341「死ってさ、いつ来るかなんて分からないんだよ。

明日、必ず生きているなんて保証はないし、もしかしたら数秒後、死んでいるかもしれない。

そんな事は…当たり前の事なのに…そのはずなのに……。

心が追い付かないんだよ。」



-----✂︎----2020----✂︎-----



342貴女を必ず「僕はッ!!貴女の側に眠れるだけで、笑顔を見ていられるだけで、毎日君とごはん食べいられるだけで、それだけでとても幸せなのです!

それが、貴女をこうして必死で守る理由では駄目ですか!?

僕は…!貴女を絶対に離さない!もう絶対に、側を離れたりしない!

例え此処で永眠する事になろうとも、貴女の側で眠る事が出来るのならそれで本望だ!」



343「多分、運命なんてものは無いんだ。"運命"ていうのは、そうなる可能性の問題だと思う。

だから、僕はそんな曖昧なものは信じない。

運命が敗北と言った所で、僕は僕らしく、地面這ってでも勝ちをもぎ取る。

できなければそれまでだったって事さ。

たださ…ただ君だけは守りたい。君を生かせるから、生かせたなら、それはどう足掻いても勝利なんだから。」



344「僕はずっと会いたかった…10年前、アンタに置いていかれてから…母さんはいつも"貴方のお父さんは私たちを捨てたのよ"って言ってた。いつもそう聞かされて生きてきた。

けど、僕はずっと疑問に思っていたんだ。

母さんの束縛から…逃げたかっただけなのかもしれないけど…

でも、どうしても!!写真に映る父さんの笑顔に、曇りなんてものは感じなかった!!

ねぇ、どうして?どうして僕たちを置いていったの?

どうして………こんな所で死んでんの…??

誰に見送ってもらう訳でも無く…葬(ほうむ)ってもらう訳でも無く…

なんで、こんな風に独りで死んでんだよ!!

会いたかった…会いたかったよ…父さん。勝手に死ぬんじゃねぇよ…。生きて…一度だけで良いから、その笑顔を僕に見せてくれよ…。」



345「何度も…何度も何度も!!言ってるじゃないですか!

貴方は独りで、頑張りすぎなんです。たまにはちゃんと、人を頼ってください…。

辛い事には、背を向けたって良いんです。嫌な事には嫌って言ったって良いんです。

貴方だけが、いつだって犠牲でいる必要はないんです。

たまには誰かを糧(かて)にしたって良いんです。

貴方は…もっと弱くたって良い…。」



346彼の元へ「嫌ッ!何故…何故止めるの!!

死者だから?生者の世界へは行っては行けない? 

そんなの…可笑しい。

私は幽霊だけど、それでも 愛する人へ会いに行きたくなる時はある。

"死が二人を別(わか)つ時まで"確かにそう誓ったけれど…そんなの余りにも寂し過ぎるでしょう?

私…彼が今どう生きていようが 隣には私ではない誰かが寄り添っていようが…そんな事はどうだって良いの。

ただ彼が、ちゃんと笑えていて ちゃんと幸せだって…そう思えていたら それで良い。

彼の生活を壊そうとか、彼を呪おうとか、殺してやろうとか…そんな事は考えていない!

ねぇ?門番さん。これ以上 何故私を止める必要があるの??

たった一目…彼の姿を見る事も…それだけの事も…死者は許されてはいけないの…?

嫌…嫌…嫌…。此処を通して…会いたい…彼にただ…会いたいの…。」



347伝えたかった「伝えたかった…??

伝えたかったって何だよ……。

1人で抱えて、背負って。勝手に辛いとか思いやがって。

良いか?辛いならまず頼れよ。

何のために、俺等つるんでんだよ?

迷惑とか、そんなの気にしなくて良い。寧ろ…寧ろこうやって…。

何も言わずに死んだ親友の前で…こうやって涙流してるって方が…。よっぽど迷惑だっての…!」



348忘れたかった「本当は、忘れたかっただけなのかもな。

アイツが居なくなった事とか、全部忘れてさ。

目の前に転がってる楽しさを拾って…笑って。

そうやって時間が過ぎて、全部忘れたかっただけなのかもしれない。

時間は、何も解決してくれなかった。楽しさを拾えば拾うほどに…辛さも浮いてきて結局底に沈む事なんかなくて。

あれから5年間。何してたんだろうな。俺。

誓ったのにな。俺、幸せになるって…。」



349信じたかった「信じたかった…。信じたかったよ…!!

でも…出来なかったの。

信じよう信じようって思う度に…なんで?って。どうして?って。感情がいっぱい溢れ出てきて…。

こんな風に人を疑ってちゃ駄目だって分かってるのに。

でも出来ない。

……貴方に私の気持ちが分かる…?

信じたくても信じれない。このもどかしくて…悲しくて…悔しい気持ちが…貴方に分かる!?」



350「大丈夫。どんなに傷ついたって私、笑うから。

だってどんなに傷ついてたって…隣に君がいてくれたら幸せだって思えるからさ。

だから、ほら。

君は笑っていて。

心から笑っていて。

それだけが私の心を癒してくれるオアシスだから。」



351みちづれ「ねぇ?

これが本当に最期の時だと言うのなら…僕は君に何て言うのが正しいのだろうか?

愛してるとか、幸せになって欲しいとか、永遠に君を想い続けるだとか…死んでも尚…なんて。

そんな飾った言葉は何度だって言ってきた。

けど、どんな言葉を言ったって君への想いは伝えきれなかった。

恐く無い。死なんて そこらじゅうに転がっていて、僕にだって存在する。

いつどんな死に方だって構わない。

そう思ってきた…なのに僕は…

今となって まだ死にたくないと 駄々をこねている。

君を 失うのが恐いんだ。

余裕こいていたくせに、わらっちゃうね。

ねぇ?間違っている事だと…分かった上で言う。

僕についてきてはくれないか…?」



352「大丈夫。

怖がらなくても良い。

痛くない。苦しくもない。

俺が出来る精一杯でお前を封印してやる。

お前、言ってたよな。ちゃんと自分を理解して、その上で自分を封印してくれる人がいればいいのにって。

俺は、どうにかお前を封印せずに おさめることが出来ないのか…そんな事ばかり考えてた。

お前がお前として力とかそんなの関係無く生きていけないかって。

けど、違ってた。

お前は苦しかったんだよな、?

力に怯えて、お前を白い目で見てくる人間達から逃げて…そんな生活…俺が、救ってやる。

だから、そんな風に苦しまないでくれ。

さよなら。さよなら。俺のたった一人の親友(ともだち)」



353「君は眠らない。
そんな事は僕が一番知っていた。
どんなに足掻こうが、僕が先に逝く…それは事実でしかなくて。
でもその現実を受け入れられなくて
もう100と59年になった。
日に日に自分が老いていくのを感じていた。薬を自分に打つ手も震えてきて、自分がヒトでは無くなっていくような感覚にすら陥(おちい)った。
あと一年、あと一年って…お迎えを拒(こば)んできた。
君を置いていきたくない、そんな簡単な感情ではなかったのかもしれない。
嫉妬とか、屈辱とか…多分そんな感情もあって…。
けど僕は、間違いなく君を愛していた。」


354「多分、いつもの気まぐれなんだけど…だけどさ、なんか。
意味分かんないけど、なんていうか…もっと、心に余裕が欲しい。」
一言メモ:なんかいつもキリキリしてる子が弱って口ごもってしまう、みたいなシーンって良くないですか?


✄------------2021------------✄

355命の終わる音がした「何度も何度も何度も、この耳を劈(つんざ)く強い音。
身を焦(こ)がす炎や爆風の熱なんかは全く感じなくて、寧(むし)ろ…寒さすら感じた。
周りを沢山の人間が逃げ惑っていなたいと願っている僕に、まだ生きろと言うのだから。」


356「どうして、いなくなろうとするのさ?
どうして、僕を置いていくのさ?
どんなに辛くたって、苦しくたって君と一緒なら今まで乗り越える事ができた。
それなのに何で…僕から離れようとするのさ??
忘れたい?もう一緒にはいられない?
……ああ。…そっか、そっか、そっかぁ。僕を置いて君は楽になれたんだね、よかったね、あは、あははは。だけど僕は…まだこんなにも苦しいよ。」


357秋桜「コスモス…彼女の愛した花だった。
嘗(かつ)てはこの庭園(ていえん)も、屋敷の敷地内全て深紅(しんく)のコスモスが咲き乱れていた。
彼女は秋を迎える度に、コスモスはどんな花よりも美しいと話した。
だが、どうだろう?此処にも戦の火の手が迫り、彼女も屋敷も使用人達も…そしてコスモスも全てが焼き払われてしまった。
そして、次の秋に咲いたコスモス達は何故か赤黒く…僕達の恋の終焉を知らせたんだ。
僕はそれでも、この場所とコスモスと、そして彼女の墓石を守り続けている
そうすることでしか、僕の罪は償えないから。」

358「言葉を紡ぐ度にこの世界に悲しみが広がるなら、言葉なんてものは消えてしまえば良い。
……幸福や喜びを感じたのはいつだろう?
……いつの間に言葉は人を傷付ける刃物になってしまったのだろう?
…いつ人は、言葉を突き立てた相手が亡くなろうと平気な顔をして生き続けられるようになったのだろう?
言葉は万能だというが、それは違う。
言葉は実に不確かで、言葉は実に凶器的だ。」


359「"ありがとう。"
貴方はいつも私にその言葉を言ったよね。
いつも当たり前にしていることでも、どんなに小さなことでも…。
……でも、私は結局…貴方になにもしてあげられなかった。
貴方の苦しみに、辛さに…!…悲しみに……何も、本当に何も気づけなかった。
酷いよ…。独りで抱えて、独りでいなくなるだなんてさ…!
"幸せってなんだろう"
それは、貴方のその声を、温もりを、当たり前に感じれる事…傍にいてよ、なんでいなくなっちゃうんだよ…!
答えてよ、いつもみたいにさぁ…?
…━━━私は幸せがなんなのかを知った。
大切な人の、”死”をもって。」


360「ねぇ!…ねぇ、ねぇ。ねぇっ…。
待ってよ。私が来るまで待ってるって、そう言ったじゃん…?
なのに先に行っちゃうなんてっ…そんなの嫌だよ!
駄目なことだって分かってる。危険なことだっていうのも分かってる。
でも、そんなのどうでも良いから一緒にいたいんだよ…!」


361「嫌い?…うん。僕も嫌い。
知ってるよ。皆も、君も、先生も、例外無く…僕は嫌われ者。
気持ち悪いとか僕が悪い奴とか、そんな事って無いんだよね。
ただ皆自分より下に見る相手が欲しいだけ。下に見る相手を探してる。
例えその人がどんな人だって関係ない。分かろうともしない。分かる必要もない!
…………ただ。嫌われ者だって悟(さと)った僕は、そこから這い上がろうとしなかった。もう手を上げて"好きにしてください"って。自分のその立ち位置を受け入れたんだ。
別に、自分が対象じゃなくなったら他がそうなるかもしれないとか…僕はそんな善人じゃないよ。
僕は、虐められてもいい。嫌われてもいい。だって、その場所だって僕の居場所に違いないから。
……知ってるよ。皆も、君も、先生も、そして僕自身も。例外無く、僕は嫌われ者。」


362「何で死んじゃうんだよっ…。
戻ってくるから、それまで負けないでって言ったじゃん。
何で負けてんの?何で死んでんの?
なぁ、そんな情けない顔…してんじゃねぇよ。"ヒーローは絶対負けねぇ"んだろ…?」


363「嗚呼(ああ)、世界よ有り難う。

私を幸福に包まれたこの世界の上に置いてくれたことを、私は感謝致します。

世界の終わりが近づいています…。

こんなに素敵な世界の最後を、見守る事くらいしか出来ない無力な私を、どうかおゆるしください。」



364亡くなった親友との約束の景色「”…パシャ、パシャ(シャッターをきる音)”

今は、誰にも邪魔されたくないんだ。

…この景色を、一緒に見たかった。

一生に一度の景色だった。

………遺したいんだ。〇〇が見られなかったこの景色を、二度と無いものにしたくない。

一瞬も逃したくない。

これが〇〇との約束だったから。」



365枯れ果てる水辺に住む水龍「水龍(すいりゅう)は水辺を護ります。

川や、泉や、海に住み、その水から成る身体を使い、人々の前に時として現れるのです。

水が清らかであればその容姿は美しく、荒(すさ)んでいれば醜(みにく)く映ります。

その命は永遠ではなく

水の消えた場所の水龍は息絶えることとなるでしょう…。

悲しくなんて、ありませんよ。

今まであなた方が私を大切にしてくれていた事を、私は知っていますから。」



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366「ふふ…貴女に何が分かるというの?
私は全てを失ったのよ?夫(おっと)も、娘も、屋敷も、庭園も…全てを。
残るは使用人の貴女だけ。
何よその顔?見てみぬふりしかしなかったじゃない?
貴女は何もしなかったじゃない。
同情するくらいなら返してよ。
…貴女の命を捧げて、私に此処にあったはずの全てを返してよ…!!」


367ハナズオウ「ねぇ?聞こえる?……聞こえないよね。
…辛いとか、苦しいとかそういうの、そういうのすら、もう疲れたんだよね。
恋するのにも、追いかけるのにも、信じるのにも…もう疲れた。
もう、”諦めがついた”って…そんな感じ。
私が消えたって、きっと君は平気。
…………本当はさ、まだ信じていたかったよ。
でももう無理。
君の裏切りが、私はもう何よりも恐(こわ)いから…。」


368人魚に恋をした「僕は君の美しい歌声や、つやのある髪の毛や、その淡く輝く鱗が好きだ。
君の何一つとして失いたくないんだ。
だからさ。僕は人としての僕を捨てて、君の世界(もと)へ行くよ。
泣かないで?僕は幸せだよ。愛する君の全てを生涯愛し続けることができるんだから。」


369呪縛霊「生きていたかった。
僕だって、生きていたかったよ。
だけど、ここで死を受けて…そのことに気がついて、でもさ。
ここから離れられずに何年もここにいるんだ。
どうして僕はここに居続けなければいけないんだろう?
ここで死んでしまった事なんか、サッサと忘れてしまいたいくらいなのにさ。
死神さんは、僕の事を忘れていってしまったのかな?
僕が悪い子だから、その罰なのかな?
早く、あの世に行きたいよ。
君みたいに、話し相手になってくれる人なんか、滅多に居やしない。
もう、ひとりぼっちは嫌なんだ…。」


370行方不明の孫の姿を。「戻れるもんなら、戻ってきて欲しいもんだね。
…とても、手のかかる子じゃった。
一人で突っ走って、無理だなんて弱音も、一度も吐かなかった。
姿が見えなくなって、村の者も…しばらくは必死になって探したがね、
生きている姿はおろか、死に顔すら見た者はいなかった。
今、どこで何をしているのかね。
どんな姿でも良い。
この老いぼれが…いつまでも、待っているんだから遠慮なんてせずに、戻ってきたら良いのにね。
本当に、おかしな子だよ。
…親と同じ。かけなくて良いところで手をかけるんじゃから。」


371黒い蝶の運ぶ先「ねぇ?お姉ちゃん。
昔、教えてくれたよね?
黒い蝶は、不幸を持ち去ってくれるんだって。
それじゃあさ、この黒い蝶達も、ちゃんと不幸を持っていってくれるんだよね…?
お姉ちゃんを、返してくれるんだよね…?」



372呪われてでも「…………仕方ないだろ?
だって、どうだって良いんだから。
この剣を持ったモノは呪われる。
そんなことは知っていた。
でもさ、そんな事どうでも良くなっちまうぐらい…お前を止めたかったんだよ。
なぁ、…馬鹿だな。
お前の居場所は、そっちじゃねぇだろ…!」


373亡くした貴女を描きたくて「違う、違う、違う!!!
違うよ…こんなの貴女じゃない。
上手くなんて描けない。
声も、顔も、手足だって。貴女とおなじ。
それなのに、…。どうして、どうしても私になっちゃうの…?」
シチュエーション説明:双子の妹を亡くしたあなた。二人とも小さな頃から絵を描くことがすきだった。おなじ顔、おなじ体をしているのに鏡の中の私は、どうしてもあなたにはなれなかった。


374「また明日がくるって思ってた。
今日だってそう。また明日がくる、また明日伝えればいいやって、でも…もう、明日はこない。
君に私の声を、気持ちを伝えることは、もう出来ないんだね。
……情けないな。
早く伝えておけば変わってたかもしれないのに、…今更後悔したって仕方ないけど。
だから、ねぇ?
せめて、君の姿が見えなくなるまで、こうして傍にいさせて。」