手紙


14個


1「拝啓 旅人様

貴方は、今どちらにいらっしゃるのでしょうか?

私が貴方と出会ったあの頃、貴方は自分探しの旅をしているとおっしゃっていました。

"自分探し"というのは、本当に難しい事だと私は思います。

私はあの後、旅人様に見習って自分探しをしてみたのですが、やはり何やら難しそうです。

旅人様、どうか体に気をつけて、良い旅をしてください。」



2「○○(異性)へ

明日、引っ越すと聞きました。

私(僕)に伝えないつもりだということも。

どうしてですか、?僕には、見送るという権利もないのですか?

僕は前々から○○がいつか引っ越してしまうことはわかってた。遠くに行ってしまうのだと覚悟もしてた。

でも、だからこそ見送らせて欲しかったんだ。

…じゃないと○○がココをどういう気持ちで出ていくのかとか、行き先とか聞けないから。

ねぇ。僕には見送る権利は…本当に無いのでしょうか?

もしも…もしもあると言うのなら、街外れの駅、電車がこの街で止まる最後の駅で…ホームで待ってます。

顔だけでも見せて欲しい。

●●(自分の名前)より」



3「これを君が、読んでいる時…きっと私は天国にいる頃でしょう。

病気の事、黙っていてゴメンなさい。

君には、最後の最後まで笑顔でいて欲しかったんだ。

ほら、私…メソメソされるの、何というか苦手だからね。

でも、本当に君には悪いことをしたなって思ってるんだよ。

君とは、高校に入学してから2年と6ヶ月一緒にいました。

君には、私とお別れをする権利があります。

けど、私の勝手な我が儘のせいで、その権利も奪ってしまって、君が私の死を知った時には私はもう居ないと思います。

…私がいなくなった世界は、どうですか?

ちゃんと、私の死を受け入れることが出来ていますか?

もしも、まだ受け入れきれてないのなら、受け入れきれてないのなら、受け入れて下さい。

私の死んだ世界を、ちゃんと見てください。

新しい友達を作ってください。

その友達と私以上に仲良くなって下さい。

そうなることを、願っています。」



4「お久しぶり。覚えているかな。君が僕から離れていってから15年の月日が流れました。
15年の月日が経った僕は相も変わらず、あの頃のままで居ます。
まぁ、そんな僕の事を君は嫌っていたのだからこんな事を今更言っても迷惑かと思いますが、
僕が納得がいかず、このままでいるのが…どうしても耐えきれないので僕の我が儘でこの手紙を書きます。
15年前のあの日、僕は君が離れていくのを引き止める事が出来ませんでした。
僕は君の"私の事、本当に好き?"という言葉に自信を持って答える事ができませんでした。
15年間僕はずっと君の言葉に対しての答えを探しました。
しかし、その答えはなかなか見つからず、こんなにも遅くなってしまった事を謝ります。
皮肉なもので、答えは僕がこの世を離れる今見つかったのです。
今更見つかった所で、君とまた共に生きることすら出来ない。
…でも、今更だけど伝えたい。
君が、君だけが好きです。」


5「私の命は、もう長くは無いだろう。そう感じたのは、今朝は嫌に目覚めが悪かったからだ。
君はそんな事はいつもの事だろうとか、そんなことで命を持ち出すなんて、大袈裟(おおげさ) だとか言うだろうが、僕にとっては"そんな事"で片付けられてしまうような出来事では無かったのだ。
だから私はその長くは無いであろう私の命の終末期にこの手紙を遺(のこ)していこうと思う。
君と私とは何故か一緒になって19の時に駆け落ちも同然に結婚したのだが、実のところ私は満足していない。それが何故かと言われればきちんと祝福して貰いたかっただとか、君に一生に一度の真っ白いウェディングドレスとやらを着せてやりたかっただとか綺麗な言葉が浮かんでくるが、本当はそうではなくて、ただ棚に隠していた僕のプリンを君に見つかって君と半分にして食べなくてはいけなかったことが不満だった。なので、どうか僕の墓参りには半分ではなくて一個のプリンを土産に持ってきてくれると嬉しい。
あともう1つ不満だったことを挙げるとするなら、飼い猫のチロばかりを可愛がって、いつも私のことは尻に敷いているということ。君のお尻は見かけよりも大きくて重い。それを分かってほしい。
そしてもし僕が墓に入った後チロを尻にでも敷くつもりであれば、チロを気の毒に思う。
私の人生はそんな半分のプリンと尻敷きになるばかりのモノだったが、そんな不満ばかりでも無かった。君と200円の上等なプリンの美味しさを分け合うことも、君の尻の重みで腰が痛くなるのも今思えば君がくれた愛だと思えるし、何よりも君がずっと側にいてくれたおかげで、寂しいという感情に浸る事も無かった。
さて、ここまで私のくだらない手紙に付き合ってくれてありがとう。
最後に言わせてくれ。棚に300円のプリンを入れておいた。今度は一個丸々だ。
そしてその高級なプリンの感想をお墓まで話に来ておくれ。」


----✂︎----2018年----✂︎----


6  6年後の私へ。「6年後の私へ。

6年後の私、元気にしてますか?お腹空いていませんか?ママやパパを大切にしていますか?今の夢は何ですか?

小学一年生の私には未来なんてまだ分かりません。それに、ただ毎日お腹が空くんです。

6:00に目が覚めて、6:30に布団から出ると、まずはママが作ってくれた美味しいご飯の匂いがします。今朝は卵かけご飯の気分だったのですが、ママはやっぱり目玉焼きが乗ったトーストを一枚、私に渡すんです。

トーストを食べたら私が大嫌いな顔洗いと、歯磨きの時間が来ます。歯みがき粉はちゃんと苺味じゃなきゃダメです。そうして仕度(したく)が出来たら、

7:30に玄関の扉を開いて、登校班の班長におはようございます。と一言。いつも無愛想な班長ですが、今日はほっぺにご飯粒がついていました。これは私だけの秘密です。

学校についたら、4時間ほど授業を受けて、給食という大戦争が始まります。いつも大食いなクラスのボンタ(名前)は、今日も自分だけ大盛のご飯を要求。これは何回見ても、不愉快な光景です。私はいつも、こっそりと自分の分の牛乳瓶をボンタの机に置きます。何故かって?私が牛乳が嫌いだからです。これが私の小さな仕返しです。

それから昼休みはドッヂボールをして、また2時間授業を受けたら家に帰ります。今日もママは"おかえり"と言うので、私は"ただいま"といつも通り返します。

ところで、6年後の私?私、何を話したかったのでしょうか?

まぁとにかく、夢は諦めないでね!絶対、○○になってね!約束だよ!

6年前の私より。」



7迷った日の私へ。「迷った日の私へ。

貴方は、今何をしていますか?この手紙を読み返したということは、何かに迷っているのでしょうか。

何があったか。それは今の私には分かりません。分かりませんが、これだけは言えます。

…きっと大丈夫です。今は多分、どうしようもなく辛いとは思いますが、頑張れば、自分を信じれば神様は笑ってくれます。

だから、とにかく諦めないで。前をちゃんと向いて。

少し休んだあとに、歩き始めて下さい。大丈夫。必ずまた進めるから。

…と、過去の私から言われても説得力なんて無いかもしれませんね。(笑)

でも、私は、いつでも私の味方です。

あの頃の私より。」



8予告状「明日の日没時、貴殿の城に眠るブルーダイヤを戴(いただ)きに参上します。

星空の煌(きら)めく夜空を渡って、時を知らせる塔を舞い、そして私と宝石は遥か彼方へ消えるだろう。  

怪盗○○(自分の名前)。」



9母の復讐「母さんへ。

母さん。いよいよ、目指していたヘイラシティに、たどり着きました。

復讐を誓った憎(にく)きアイツは、もう目と鼻の先に居ます。

明日には、この街を探索して復讐の準備を固めようと思います。

早く、一刻も早く…勝ち誇るアイツの胸に、このナイフを突き立てたい。

……母さん。天の楽園から、応援していてください。

○○より。」



10「死後を生きる君へ。

君が亡くなってから、一年が過ぎました。あの頃は取り乱し、毎日泣いて死にたいと嘆いていた僕も、少しずつではありますが、君がいない日々に馴れてきています。

決して君を忘れたい訳ではなく君のいない日々に嘆くばかりの僕を君が見たら、きっと悲しむだろうと思ったのです。

今でも君がいないこの空間が悲しい。だけど、安心してください。もう死にたいだなんて言いません。なぜなら、君が生きていた頃、何度も何度も、"長生きしてね"と言っていたから。

だから、どんなに辛くても悲しくても、君に会いたくなっても…僕は今日も生きて行きます。

だから、君も天国で、笑っていてください。

そして、僕が天国に行った時は、笑って出迎えて下さい…!」



11お父さん・みんな「お父さん。お父さん…。今日、世界は平和ですか?皆は笑っていますか?ちゃんと青空は広がってますか?お父さんは…幸せになりましたか?

私は、あの日お父さんの涙を見ました。でも、あの涙は…いつもの綺麗な涙ではなくて、黒く…黒く黒く荒(すさ)んだ涙でした。

私は、お父さんの笑顔を知っています。明るくて、暖かくて…屈託(くったく)の無い無邪気な笑顔。

……でも、お父さんは変わってしまっていた。自分を見失っていた。…"私"が消えることで、お父さんが、本当の自分を思い出せたら、それが私の幸せです。

……お父さん。また笑って下さい。また…綺麗な透き通った涙を流してください。

お父さんはいつまでも、私のお父さんです。さようなら。また会う時まで。」



12遺書「家族へ。

この手紙を読んでいるということは、もう既に私はこの世にはいないことだろう。

…こう書き始めればきっと"ふざけるな"と家族の内の誰かから怒声が上がることだろう。

私は、書斎で首をくくる事を決めた。

だが、私が首をくくるのは誰のせいでもなく私のせいである。

家族を守りたい。私がいつも想うのはその事だけだった。

父は、家族の為に尽くしたが、それでも私の力や想いが家族の幸せへと繋がることは遂に無かった。

だから私は首をくくる。

その事で我が愛する家族に幸せが訪れるように。

父は、父は家族の笑顔を今もいつまでも、願っている。」



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13親友として「○○へ。

これは最初で最後のお手紙になります。

捨てず、折り曲げず…ずっと側に置いていてくれたら嬉しいです。

ずっと前から思っていた事があるんです。

貴方には思い人がいて…私にも思い人がいる。

貴方の相談を沢山聞いて、私なりの意見を伝えて…。

ついにこの間、貴方の恋は叶いました。

貴方の"親友"として、これ程嬉しい事はありません。

けれど私は、あの夜涙を流しました。

"親友"だったら、こんな時泣かないのに。笑って祝福してあげれるはずなのに…。私にはそれが出来ませんでした。

だって…私は、1人の女として…貴方の幼馴染みとして…ずっとずっと前から貴方のことが…。

こうして手紙を書きながらも…ボロボロ涙が出てきて…貴方との別れを惜しんでしまうんです。

私は親友だから。親友として、貴方にこの言葉を…さよならを伝えます。

ずっと前から思っている事。…貴方がすき。

どんなに繕おうが、この気持ちだけは、ずっと曲がらない。

○○より。」



14必ず「これから俺は戦に出る。

それだけ最初に伝えておこう。

お前は生きて帰れと言ったが、これから向かう戦、かなり難しい戦になりそうだ。

だが、敗けには行かない。俺は勝つ為に行ってくるんだ。

だから、難しい戦と分かっていて行くなとか、生きていてくれればそれで良いとか、そんな事は口にしないで欲しい。

出来れば安心して、待っていて欲しい。

必ずまた会おう。

それが来世ではなく、現世である事を、心より願っている。」



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