1「この世には、"パラレルワールド"というモノが存在するらしいけど…。それはどんなモノなんだろう?
…向こうの世界には、私じゃない"私"がいて…。その私は、自分の生活をおくってる。
…どんな人に恋してるのかな?
…どんなモノが好きなのかな?
…お母さんやお父さんは?
…なんて、沢山問いかけてみたくなる。
ねぇ?そちら側の私?貴方は、その生活に満足してる?
私は…不満かな。
…もし、"良かったら"だけど、明日1日だけでも、世界を交換してみない?
……なんてね。そんな事出来るわけないか。(笑)」
2「"宇宙に独り"それは悲しい事なのですか?
…誰だって、最初は1人で存在する。孤独の中をさまよって…そしたら、いつの間にかパパとママに出会う。
…1人は辛い?…1人は苦しい?……ううん。1人は2人。2人は4人の始まりだから。1人でいるのはこれから"出会う"前の入り口だから。
…だから、今日も私は"宇宙に独り"で生きてゆく。」
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3猫の世界の番猫「やぁやぁいらっしゃい。此処へお客様がくるなんて久しぶりだなぁ。
どうしたんだい??こんなところにそんな格好で…。
もしかして今日の舞踏会へ参加したいとか?
三つ子の産まれたヘーゼルにお祝いの言葉でも言いにきたとか?
スズメのハーベンの墓へ墓参りをしにきたとか?
それかフーマの美味しいマドレーヌを買いにきたとか?あれは実に絶品だ。
いずれにしても…そんな格好で此処に来るだなんて全く感心出来ないお客様だ。
まず靴なんてものは要らないし、君には尻尾も耳もヒゲさえ生えていない。
一体そんな格好でどうして僕が歓迎するとでも思ったんだか。
ん??なぁに?此処が何処かって?
………あぁ。ようやく分かった。
つまり君は、迷い子なんだね。
訳も分からずただボーっと歩いてきたらまさか此処へ辿り着いたと。
全くついていないなぁ。
こんな所に来てしまうだなんて。
にゃあ?(なぁ?)人間様??」
4猫の世界の番猫「にゃ~んで逃げるんだあ?人間様ぁ。
此処にせっかく来たんだからもう少しゆっっくりしていけば良いものを。
ほらほら、もう取り返しなんてとっくにつかにゃい。人間の世界なんて全て忘れて此処の住民として過ごすだけにゃ。
恐い事なんか何もにゃい。
ただその身を委(ゆだ)ねれば良いだけにゃ。
にゅふ。にゅふふふふふ(笑)」
5砂時計(上の住人)「私はずっと此処にいる。この時計が時を刻むことはもう2度と無いのでしょう。下の彼女はよく上を見上げ私のことを不思議そうに眺めてくる。以前お互いの世界を繋ぐ唯一の穴の隙間から その手をのばしてこようとしていたけれど、その手を払ったあの日からその手をのばしてくることは無くなった。ただ視線だけが私に注がれる。
ふと赤い実を穴に放ると、彼女は笑って”ありがとう”と言った。
”どういたしまして”それが彼女との始めて交わした言葉だった。」
6砂時計(下の住人)「私はずっと此処にいる。私の上にも誰かがいる。
仲良くなりたくて手をのばしたらキッと睨まれて手を払われた。
それでもあのコを見ていたら、真っ赤で綺麗な果物をくれた。
”ありがとう”と伝えたら、ちょっと間をおいて”どういたしまして”ってかえってきた。
あのコのことがやっぱり好きでもっともっと仲良くなりたい。
始めて交わした言葉。
ずっと私の宝物。」
✄------------2021------------✄
7異世界の誘惑「あら?もう帰られるの?寂しいわ。○○(相手の名前)さんにはずっと此処にいて欲しかったのに…。
ねぇ?提案といってはなんですが、この国で生活してみるっていうのはいかがかしら?
貴方がいてくれるのなら、毎日宴(うたげ)を開きましょう。
皆貴方の為だけに集うわ。料理もお酒も振る舞われるわ。
決して退屈することの無い、充実した一生をおくれる。ということです。
いかがですか??」
8「ああ、そんな、そんなそんなぁ!!
何処へ行こうって言うの??
此処にずっといるとそう言ったのに!!
……そんなの、そんなの誤解。誤解だわ。
私はただっ………。
んふふ、ふふ、あーひゃひゃひゃ。
ざーんねん。全部バレちゃってたんだ?
そっ♪最初から全部、私の計画。
全てが貴方の世界を乗っ取るがための作戦だったって訳。
…んふ。でもね?○○さん。気づくのが少し、遅すぎたみたい。
だってもう、準備出来てしまったんですもの。
全て終わり。貴方の生まれ育った街も、も、森も海も山も全て!
私達のモノ。」
9溝「全てが落ちていく。
道端に小さく開く、溝の口が全てを飲み込む。
桜も、雨も、紅葉も、粉雪も…季節の全てが。
そして何も無くなるんだ。
色も、音も、形も全て。
嗚呼、その全てをもう一度この手で掬(すく)いとれたなら世界はもう一度色づく事が出来るだろうか?」
10色の無い世界「貴方に分かる訳が無いでしょう?
色の無い世界が…いかに、つまらないかなんて。
貴方は私に教えてくれました。
肌の色や、口紅や、頬紅を…私に彩(いろど)ってくれました。
それでもほら、見てください。
嘘は剥(は)がれ落ちます。
お前は偽物だとでも言うかの様に。
私は…本物の彩(いろ)が欲しいのです。
だから、どうか抗(あらが)わないでください。
どうか…貴方の彩を。私にください。」
11死者の行く世「あら、いらっしゃい?
…貴女の明かりはまだ、消えていない様ですね。
…ふふっ。どうかなさいましたか??
その様な暗いお顔をされて…。
…お友達に?
お友達は、お亡くなりになったのですか?
そうでなければ、此処においでになる理由もありませんものね?
たまに、いらっしゃるんです。
死者に話を乞(こ)う方々が。
しかし、私はあまり…それを好ましくは思っておりません。
死者は眠っているのです。…生前の苦痛からやっとの思いで逃れ、安楽を求め…此処にいらっしゃるんです。
それを邪魔してほしくはないのです。
貴女が死を迎えた時、その時はまた此処へおいでください。
貴女の明かりはまだ…その時では無いから。」
12 1か月で植物になってしまう世界「ああ…ごめんね。
驚かせてしまって。ただ、僕はもう時間切れみたいでさ。
一緒に元の世界にもどりたかったけど、それは叶わないみたいだ。
……ごめん。心配をかけそうだったから、嘘をついてしまってさ。
…そう。僕は君より3日早くこの世界に来たんだ。
はじめの3日間は、本当になにも無くてさ。周りは植物だらけでどうしようもなくて途方に暮れてた。
そしたら君が現れてさ。絶望から解放された気でいたんだよ。
……けど、やっと分かった。
此処は…この世界は植物になってしまう世界なんだって。
数日前から足に違和感を感じていたけど…今ではすっかり地面に根を張って…もう此処から動けないんだ。
……僕はリタイアだ。
だけど君にはまだ3日間もある。
急げ。急いでこの世界から出るんだ。
余計なことは考えるな…タイムリミットは近い。」
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