語り手台詞


42個


1.「蠢(うごめ)き出す世界。

どこへ向かっても先に生なんか待っていないのに...金をかき集める人..泣き崩れる人..人殺しをする人..。

地球滅亡その一言で狂い出した日常はもう取り戻すことは出来なくて...

刻一刻と近づいてくる滅亡の中、1匹の黒猫が僕に言う。"生き残りたいか?"と...

そして僕の時間は止まる。全ては、生き残るために。」


2「息も絶え絶えにしてたどり着いた先に待っていたのは研究所。抵抗もできずに飲み込まれていく身体。...もう引き返せない。

僕はオモチャ。コードだらけにされ、脳から意識が飛んでいく..."ねぇ、君は最初から居なかったの?"」


3「日々広がっていく宇宙..生まれる生命。果たして、世界に終わりなんて、本当に存在するのでしょうか?これからするお話は、そんな広い広い..果てしない宇宙の中の小さな惑星の...小さな街で起こった出来事のお話。さて、みなさんはこのお話を、どんな気持ちで聞くのでしょうか...」


4「僕らは生まれたとき、一つのストーリーをもらう。まだ内容がないストーリーに、自分の手でストーリーを描いていく。……しかし、ある時思うのだ。これは自分の望んだストーリーじゃない。と。だが、立ち止まれない。進むしかない。ページを裂いて無くすことなど、できはしないのだから。」


5「この物語のはじまりは、いつだったのだろう。そう、それは…人々が夢見たとき。子供達が笑ったとき。…悲しみに囚われた時……。いずれにしろ、その物語はその人に希望も絶望も与えたであろう。いずれ訪れる、果ての日のために。」


6「物語があれば主役も、そして脇役もいる。それは当たり前のことで、当然のこと。でも、脇役であったとしても、一度は思うのです。主役になってみたい。と。そして、今回はそんな村人Aのお話。主役に憧れてしまった名もない役者は果たして、?それは、作者のみが知り得ること。」



7「数多(あまた)の生物の中で人類とは最も欲深い生物だと言えよう。

だがしかし、二頭追う者は一頭も得ずという言葉のある通り、全ての欲を満たそうとするとどちらも満たされぬまま…となることが多々ある。

そう。いくら欲深い生物だとは言えど、欲に溺れてしまっては、そこには満足とは程遠いただただ満たされない欲望が待っているだけなのだ。

しかし、人類は欲を追い続ける。

そのことに終わりなどない。

故(ゆえ)に永遠と続く欲の中、私達は生きている。」



8「時という大きな流れの中で私たちは小さな存在にすぎない。ただ、そんな小さな存在でも、時に大きな影響を及ぼすものであることを、私たちは理解しなければいけない。」



9「この世は欲に満ちている。欲の無い生物など存在しないと言う程に。さて、この欲に満ちた世界で、欲に埋もれ自我の為に他(た)の者の幸福を脅(おびや)かす者が現れた。

だが、それは生物として、誠に誤っている事であると言えるのであろうか。

真実を知るは神のみ。

うちに現(あらわ)る勇者はこの問いをどう考(こう)ずるのか…。そして、如何なる答えを導きだすのか。

さぁ、始めよう。世界の理(ことわり)の物語を。」


10「昔々のそのまた昔…男と女が居た…。その二人は本当に愛し合っていた。そう、真の愛と言うに相応しいほどに。しかし、やがて二人は闇に落ち、真の愛は、永遠とは及ばなかった。…さて、現代においては恋愛と言われるものがある。皆、好きという言葉を多く使い、そして数ヶ月の時を過ぎた後に別れを告げる。果たして…この世に、真の愛とは存在するのだろうか。その問いは今も尚言われ続ける謎である。…それでは、そろそろ物語を始めよう。ここにも、愛し合う二人が居る様だ…。私は見守るとしよう。この二人の行く末を。皆も、共に見守ってくれ。この愛の行く末を!そして…皆が現在持つ愛の行く末を。」



11「青い青い空の下…1人の旅人がいた。旅人は酷く世界に絶望していた。

人々には愛が足りない。愛が足りないこの世は、酷く汚れていて、何かが欠けているようだ。

そして旅人は愛を探す旅に出かけた。果たしてこの愛の無い世界で旅人は愛を見つけ出せるのだろうか?」



12「何も書かれていない白いページ。
書き手はそこに絵なり文字なり…思い思いの形で物語を描き出す…。
作風というものも人それぞれ。
その作者によって固かったり…柔らかかったり…。冷たかったり、暖かかったりする。
そうして出来た物語達は…役者やこの私のような語り手によって人々に語られる。
そう…どのような素晴らしい物語も、歴史を変えた偉大な物語も、子供達の心に眠る小さな小さな物語も…どれも元は白いページから始まるのです。」


13「遥か昔…ある地に魔物と人間の暮らす国がありました。
しかし、両者共、相手を尊重することはなく、国内での戦争がとても長く続きました。
ある日…人間が言った。そろそろ決着をつけようと。
魔物の魔法と人間の科学。
終わり無き戦いに終止符を打つために、両者の戦いが今、始まる。」


14「誰しも一度は死後の世界について考えるのでは無いだろうか?命ある者の中にはそれを恐れる者も待ち望む者もいる。
そう語る私も、実のところ死後の世界のことはよく分かってはいないのだが、果たして死後の世界とは何なのか。そもそも存在するのか、?
それは神と仏…そして死者のみぞ知ることである」


15「生物は皆、生(せい)へとは歩んでいません。産まれた時からずっと死へ向かって歩んでいるのです。
死は誰にでも、平等に訪れます。この世に終わらない命など無い。
しかし、だからこそ命とは美しいのです。」


16「毎日…おかえりと言える事が、どんなに幸せか貴方には分かりますか?
家を行ってきますと出た人間はまた、ただいまと帰ってくる。それが日常であり、通常の事。確かにそうです。
ですが、急な事故、もしくは事件によって帰らぬ人となってしまい、もう2度とおかえりという言葉を伝えられなくなってしまう事もあります。
そんな時、人は悲しみと後悔を抱く事になる。
そうなってしまわぬよう、日々の日常を生き、そして愛する人が死に絶えたその時、永遠に帰らぬ外出へと、見送ることが出来るように。」


17「書物には、沢山の物語が語られている。
そして人は、その手に取った書物から物語を教えられるのだ。
そしてここにも、とある書物が一冊。さて、この書物にはどんな物語が記され、語られるのだろうか?」


18「いつもいつも私は見ていたのかもしれない。この色の無い世界を。
電話の向こうで寝息をたてる彼…声もたてずに独り泣く私…
私は今一体何をしているんだろう。時間は午前1時12分。良い子はとっくに寝る時間だ。
……虚しい。寝息をたてる君のことが恨めしい。
どうしてだろうか。」


----✂︎----2018年----✂︎----


19「僕達生物には好きなものと嫌いなものが存在する。

それは太古の昔、僕達の食べるものを決めたし、そして仲間や今では職業も決められる。

そんな好きなもの嫌いなものには個人差というものが存在する。

同じ人間でもその個人差はあるもので、例えば僕の好きなものを君は嫌いかもしれない。

だから好きな事をする時には周りに配慮しながら行わなければならない。

なにも、するなとは言っていない。ただ自分のやっていることを誰かは嫌がっているっていう意識が大切だってこと。」



20「彼等は…闇より現れる。それは、人々に災いをもたらし、それは世界を破滅へ導く。

彼等を停められる者は存在しない。

この災いに世の民は抗えるか」



21「朝のラッシュの電車の中、その人は僕の目の前に現れた。

桜色のブラウスに、黒色の可愛らしいスーツを身につけ、髪は上の方で小さく結われている。

色白の肌、申し訳程度にされたメイク。

僕はその人を見て、数秒遅れてこう思った。

…可愛い。

それは今思えば一目惚れだったのか…

そう思うと少し恥ずかしい。

これから始めるお話は、そんな僕のある春の日のお話。」



22「朝のラッシュの電車の中、その人は私の目の前に現れた。

ネクタイをキチッと締め、真新しいスーツを身につけ、髪には少し癖っ毛がある。

少し小柄で、成人男性にしては少し可愛らしい顔つき。

私はその人を見て、数秒遅れてこう思った。

…可愛い

それは、今思えば一目惚れだったのか…

そう思うと少し恥ずかしい。

これから始めるお話はそんな私のある春の日のお話。」



23「世界は大きい。果てしなくもあり、そして果てのある世界は、いつでも我々の身近にあり、そして遠くにある。

そんな世界は、我々に様々な世界を垣間(かいま)見せてくれる事だろう。

それは美しくも有り、そして汚らわしくもあるだろう。

つまるところ、世界とは実に透明で、濁っているのだ。

そんな実態の無い…得体(えたい)の知れない世界と、我々は日々歩み、生きている。

そして死を目の当たりにするその時も、やはり世界は貴方の側にあることだろう。」



24星の涙「星空には、沢山の星達が転がってる。星達の性格は、生き物みたいに様々で……そう。星達にも、皆"命"がある。

甘えん坊…怒りん坊。照れ屋さんに…恥ずかしがり屋。元気いっぱいな星。静かな星。そして…寂しがり屋な星。

星達も、たまには喧嘩をする。死にたくなる時だってある。……でも、それでも生きていかなくてはならないから…。

今日もこうして、涙を流すのです。」



25「とある星の端っこに、とても綺麗な一輪の花が咲きました。ある日、その花を見つけた少年は、"なんて美しい花なのだろう。この花を、一生守って見せよう"と、この花を守ります。

……しかし、花は次の日枯れてしまいました。

悲しみに暮れた少年は言いました。

"大切なモノ…愛したモノが消えてしまうのなら、いっそ想う事を辞めようと。"」



26「痛み…それは人の心に沈む。喜び…それは人の想いに溢れる。

どのような人にも、そのどちらも在り在りと存在する。

時にそれは心を揺らし、時にそれは想いを壊す。

人とは知恵を得たその時から心と想いを得て、そしてそれを揺らし、壊すことも得たのです。」



27「"いつも人を愛しなさい"誰かがこんな事を言った。人を"愛する"というのは、恋人だとか夫婦の事だろうかと、私は不思議に思っていた。

しかし、最近では愛するという言葉は、心を受けると書くように人が人へ。

生物が生物へ心を受け渡すものなのだろう。と、そう思う。

つまるところ、愛とはその対象が何たるかに限ることではなく、自身が心を受け渡したい。とそう思うことが愛なのである。

つまり、いつも人を愛するという事は、いつも心を受け渡すという事。

つまりそれは人と人との関わる中ち生まれる想いだと言える。」




28硝子の向こうのもう一人。「私たちは、一人。お互い、厚い硝子の向こうの相手を見ながら生きている。

この世界には二人しか存在しないのに…。相手には絶対に触れられない。

何故だろう?触れられないのなら、彼女が存在する意味とは何なのだろう?

彼女は、今日も平凡な日々をおくる。……"ねぇ!!"

彼女の平凡な日々に、ほんの少しでも、"私"という衝撃を残したい。

お互いに、影響し合うために此処にいると思うから。」



29隣で。「"ヒロインが死んでしまう"そんな設定は、数多くどこぞのアニメとかで見るような設定だ。

…それが本当に起こるなんて、そんな事は考えもしていなかった。ただの2次元だからこその設定だと思っていた。

……隣を歩いていた誰かが死ぬというのは、苦しくて…辛い。怒り狂いそうで、悲しい。

ただただ今は、君の屍を抱いて歩く事しか出来ない。

"お姫様抱っこしても良いんだぞ?"と、強気な君は笑ってた。

でも…今更そうしたって、もう遅い。君はもう居ない。

ただ、君にもう一度目覚めて欲しいから。君が居た空間に、行けば、君が"冗談だよ"と笑いながら目を覚ます気がするから。

君が一緒に歩んでくれた道を、僕は君を抱いて帰ろう。」



30「丁度20年前…永遠の愛を誓ったばかりの…あの頃。君は、僕の前から突如消えた。

それは"不幸"と片付けてしまってはいけない程の…事故だった。

あれから20年…僕は他の人と付き合う事も無く…。42年という短い人生を終えた。

死因は、心臓に出来た腫瘍(しゅよう)だった。

…そして今、死後の世界への道を歩いている。

死というのは、誰もが恐怖を感じるモノだと思っていたが、不思議と僕自身、"やっと君に会える"という幸福しか感じなかった。

この道は、どこまで続くのだろう?

眩(まぶ)しい。眩しい…はずだけど、なんだか心地いい。

……僕はいつの間にか眠っていた。

目を開けると、そこには…20年前と変わらぬ君の顔が、心配そうに…それでも嬉しそうな顔が覗いていた。

……"久しぶり。やっと会えたね"」



31"自分とは"「貴方は、自分が誰だか分かっていますか?

ああ、(笑)スミマセン。急な問いかけに戸惑ってしまいますよね。

まぁ、それもそうですよね?

"自分は誰か"なんて、"自分は自分以外の誰でもない。"だとか、"それ以下でもそれ以上でもない"とか答える他にありませんからね。

…しかし、私はもう一度だけ 貴方に問わせて頂くとしましょう。

貴方は、自分が誰だか分かっていますか?

例えば、何か…普段とは違う行動を起こそうとした際。"自分らしく無いな"などと…一端その行動をするか否(いな)かを問う事はありませんか?

……それでは、そもそも"自分らしさ"とは?"自分"は"自分で無い"のなら何なのだろうか?と…そう考えてしまいますよね。

それならば"自分"は誰なのだと…やはりこの問いに辿(たど)り着く事となるのです。

……さて、私が一体"何を言いたいのか"その問いに私は…"別に何も。"とお答えしましょう。 

…そう。この問いかけに、意味など存在しませんから。

……ただ、覚えていて欲しいのです。……何か行動する際…"自分らしさ"を気にする事など無いのです。

だって、"自分"は、"自分"なのですから。」



32光「光……それには目を引く力がある。誰もがそれを目にしては、我がモノにしようと近づいた。

……"無駄な戦"それはその様な状況に相応しいモノなのだろう。

…まるで、電灯に群がる蛾(が)の様に…群がり、争った末にあるモノは、希望ではなく絶望…そして死なのだ。

…だが、本能がままに…また光の虜に成り果てた者共が、この争いを始めるのだ。

…その末にあるものが、何であるかも知らずに。」



33魚の泳ぐ空「…何…。あれ…。

"それ"は、空を泳ぐ魚の群れ。……いや、単なる"魚"と呼ぶに相応しく無い…通常のそれには考えられない大きさのそれは、姿・形はそれそのものだが…やはり私の知る"常識"とは似ても似つかなかった。

もはや空を泳いでる時点でも何か胸騒ぎがするが……しかし、私は今は走り出す事しか出来なかった。

異世界に来てしまったとしか考えようの無い現状に、ただただ焦っていたのだ。

もしも、現実世界であるのなら、家には母さんがいるし、学校には友達がいるはずだった。……しかし、私が目にしたのは、魚に足が生えただけの怪物が私に話しかけてくる光景だった。」



34「終わった。全ては終わった。

東京の蒼白く燃える空の下…此処では全てが死んでいた。

国道をビュンビュンと走る車…空き地に群れる野犬…交差点を行き交う国民達…全てはこの空の下で死んだ。

どこぞのテーマパークでは、アトラクションを操作していたスタッフさえ倒れ、ただ観覧車のみがゆったりと時を刻んでいた。

そして、残ったのは……死にたいと俯(うつむ)いていた女子高校生がたった一人。

そして彼女もまた"なんて日だ"と呟きながら今、その首にナイフを突き立てる。

そしてこの街の呼吸は止まった。」



35「宇宙には、数えきれない程の星がある。

星には1つ1つ命が宿っていて…1つ1つには確かな性格がある。

……私達の惑星。私達はこの星を愛さなければならない。

他の星の大気だとか…知的生命体が存在するかだとか…。

そんな事はどうだっていい。

私達は私達が生まれ、そして生きるべきこの星で咲かなければいけないから。」



36海「夏の海は燃える。

人々は夏になると海を思い出し、再び海へと足を運ぶ。

活気と熱に燃える海は静けさを失い、春や秋、冬に感じていた寂しさを忘れる。

夏の海は、人の匂いに溢れ、そして9月…もう秋が始まる頃に、また海は孤独になる。

海は思いました。さみしい。さみしい。と。

そして、そうだ。人を捕まえてしまおう。そうしたら寂しくないよね?と…海の感情は狂った流れを生み出しました。

…海は人を捕まえて、

"ねぇ。遊ぼうよ!!"返事は当然ありません。

"ねぇ?""ねぇ?"と、海は何度も自分の中に浮かぶ人に呼び掛けました。

…が、その声も虚しく人は目を覚ますことはありませんでした。

人々が、その海へと立ち寄る事は無くなりました。

そして海は、また一人になりました。

…さて、皆さんはどう思いますか?この海を、怖いと感じるでしょうか?」



37「君を置いて一人ゴールテープを切った私を、夕日はただ嘲笑っていた。

本当は隣を一緒に走っていて欲しかった君は、足を抱えて倒れていた。そして歓声は沸く。いつまでも私がこの罪を忘れない様に。」



38「人々は、この星の果ての姿を見て、どう感じただろう?

人々は、この星の何を愛し、何を嫌ったのだろう?

人々は泣いた。人々は笑った。人々は怒(いか)った。

この星の上で生活している全ての生物が、この星を失いたく無いと哭いた。

ただ、ただただ果てへと向かう星…。地球。

僕たちの愛したこの星で僕らは、ずっと生きていこう。

例え、果ての時が僕らを引き離したとしても。」



39「混ざり合う色と色。人々はソレに何を感じるか。

ソコに何を産み出すのか。

いずれにしても、この世のモノを創造したのは、私達生ける者の認識だったのだ。」



40「神様は愛しました。

1人の村娘を愛しました。

彼女の笑顔は怒り狂う野獣をも優しくさせ

彼女の涙は邪悪な悪魔をも魅惑するといいます。

名も無き村娘…

彼女は後に奇跡を起こします。

何の力も財力も…何も持たない。ただ神に愛された村娘…この娘の未来…そして過去とは…。

神は願いました。この娘に不幸の降りかからない。幸福の未来を。」


----✂︎----2019年----✂︎----


-----✂︎----2020----✂︎-----

41「昔々のそのまた昔…とある村のとある少年のお話。

ホラホラそこのお兄さん聞いていってよ。

この少年、ごくごく普通の少年かと思いきや?実は実は鬼とヒトの合の子。

そんな少年がごくごく普通の生活をおくれるはずもなく?

少年は日々ヒトより 白い眼差しを受け続けて参りました。

少年の額(ひたい)には小さな角が生えておりましたし?瞳は紅色(くれないいろ)に淡く輝いておりましたので。ヒトビトのそんな対応も致し方無いモノだったのかもしれません。

ところがところが?そんな少年にも転機が参りました。

こちらはカラシ色の着物に身を包んだ白い肌の少女。

ごくごく普通の少女である彼女は、鬼とヒトの合の子である彼にそれは優しく接したそうで。

二人は瞬く間にお互いを想い合う仲となりました。

当然ヒトビトは放ってはおきません。

さてさてこの二人の行方は…。

お兄さん、どうなったと思いますか。」



42「さぁさぁ皆さんお立ち会い。

これより私の長い様で短いお話をお聞かせするんでね?

視線は痛いから向けんでも、耳の穴だけこっち向けといてよねぇ?

さーて、ざっと20人くらいは集まったかなぁ?耳の穴が40個。まぁこれくらい集まれば良しとしようか。

んん?これから何を語るのか?

皆さんそう急かさんでください。

ちゃーんとこれから聞かせますから。

これから話すのは、かの有名な人魚姫と出会った男の話。

男は極々普通な漁船の船乗りだったそうなんだけど。

この男、ある日突然人魚を網に引っかけて取っちゃった訳。

男も最初、死体でも引いちまったかって心底驚いたみたいだが

下半身の色鮮やかな鱗やヒレ。

これ見ちまったから大変だ。

なんとその男、人魚を自分のとこの生け簀に入れて飼おうと企んだ。 

これで商売繁盛 大儲(おおもう)け。…と、なればよかったが。

人魚がいると村中に知らせて回った次の日の生け簀。

そこに人魚の姿は無かった。

姿どころか鱗一枚落ちちゃい無い から村の集も黙っちゃいない。

"どーせリョージローの嘘にちがいない"

皆そう言って男を責め立てます。

その後リョージローは家に帰ったとされるが?

その後からリョージローの姿を見た者はいない。

残ったのはたった一枚の鱗だけ。

リョージローは何処へ行ってしまったのか??

それは誰にも分からない。

………どうです??皆さんは人魚、信じますか??」


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